映画「ビューティフル アイランズ」②


「Beautiful Islands」
海南友子監督

2ヵ所目はシェイクスピアの有名な作品「ベニスの商人」(読んだことないけど)の舞台でもある水の都ベネチア
ベニスより、イタリア語読みのヴェネチアの方が、かっこいいかも


ここは小さいころから、行ってみたい場所だった
どうして惹かれているのかわからないけれど
ゴンドラでの移動が普段の自分の生活リズムと異なり
知らない速度での生活ができる気がして惹かれていたのかもしれない


ゴンドラの上で歌う人あり
両脇の壁で反射するその歌声は、シンプルなギターの伴奏がよく似合っていた


2人の子供を乗せた父親は、橋にある紋章の意味を子供たちに説明する
父親はゴンドラ乗りであることを誇りに思っている
それは水の都ベネチアでの生活を誇りに思っているということ
理想の世界に生きている
兄の好きなことは、泳ぐこととテレビゲームだという
泳ぐこと
それは水の都での生活ならでは
テレビゲーム
それは水から離れた建物上での生活ならでは
兄は水の都の生活と、建物上の生活の両方の生活を楽しんでいる
理想の世界と現実の世界を行ったり来たりするキーマンだなきっと
そしてその兄は、父親の後を継ごうかなとぽつりと言う
漕ぐのは簡単だねという兄のその言葉に対し、父親は、お父さんが手伝っているからだよと笑いながらいう
その父親は、自分の息子の発言に嬉しそうだった
それに対し、弟はダイバーになろうかなという
彼は兄と異なり現実の世界に生きてゆくのだろうか
それは、もはや将来、この街が水没するかもしれない将来への暗示
父と2人の息子
3人の男たちが、それぞれの想いをこめて、静かに、そして優しく笑ったその顔は忘れることができない


ナポレオンが世界で一番美しい街だと形容したサンマルコ広場も写っていた
歴史を感じさせる美しい街
行ってみたいと思っていただけで、積極的に何かを調べようとはしなかった自分
この街が、ここまでひどい水没になってきているとは知らなかった



ワーグナーバルザック(内容は覚えてないけど)も泊ったという歴史あるホテル、ダニエリ
カラバッジョの弟子の直筆画もあると誇らしげに支配人が言っていた
行きたいわこりゃ


そんな街の飲み屋のお客も大変そう
市長が水門を造ると言ったのに、いまだに造りやがらないと、爺様がぼやいていたけれど、
水門でどうなるものでもないのが悲しいところ
それでも、街の人々の優しい微笑みは、水の生活と共存していた


そしてまた、ベネチアで有名なカーニバル
その仮面からは表情が読みとれない
年齢も身分も関係ない
そこにあるのは人であるということだけ


起きている現実をどう捉えてゆくのか
どうすればよいのか
その踊りは現実逃避でもあり、現実を超越した楽観主義でもあり
いつしか無くなるこの街の姿を思い、
日々の生活を存分に楽しむことで、人々に感謝する
歴史へのリスペクトとともに


なんだか結論の見えない本質を暗示しているみたいだ



いつしかこの街も水没する運命にある
この夕日を観ることが出来なくなる日がくるのかもしれない


興味があるだけでは気付かないものがある
積極的に何かをしないと、見失ってしまうものがある
無くなってから気付くのでは遅いものもある


ベネチア
そこには自分の知らない街がある



ワーグナーと言えばこれだぜ度 ☆☆☆☆☆
トスカニーニが動いてます度  ☆☆☆☆☆
音の悪さは気になりません度  ☆☆☆